【書評】『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子著|MRとして、ひとりの人間として、この本に揺さぶられた

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エンド・オブ・ライフ 書影

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オンコロジー領域を担当するようになったばかりの頃、書店に平積みされていた一冊のノンフィクションが目にとまりました。

それがこの『エンド・オブ・ライフ』です。

「がん患者さんが、どんな思いで治療と向き合っているのかを知りたい」。
そんな気持ちで購入したものの、当時は製品知識の習得に追われ、本棚の奥にしまい込んでしまっていました。

最近ブログを始めたことをきっかけに、読んできた本をあらためて見返していたところ、ふとこの本が目にとまり、「今こそ読むべき時かもしれない」と感じて、手に取りました。

『エンド・オブ・ライフ』の著者、佐々涼子さんは、ノンフィクション作家として知られ、2012年には『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で開高健ノンフィクション賞を受賞。その後も『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』で紀伊國屋キノベス!やダ・ヴィンチBOOK OF THE YEARで1位に輝くなど、死や再生、現場のリアルを深く描き続けてきました。

本書『エンド・オブ・ライフ』は、京都の訪問診療所で200人以上の最期に立ち会った看護師・森山文則さんを7年にわたり丁寧に取材し、友人として、取材者として、その“死”と“生”の境界を見つめた渾身の作品です。
※引用:www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp+11ja.wikipedia.org+11shueisha-int.co.jp+11


すぐに読み終えるつもりが、何度もページを閉じては開いた

正直、オンコロジー領域に携わって5年。ある程度「闘病もの」には免疫があると思っていました。ところが本書は、そんな自分の浅さを優しく、でも容赦なく突きつけてきました。

ひとつひとつのエピソードがあまりにも濃密で、読み進めるたびに心が揺さぶられ、何度もページを閉じては深呼吸し、また読み直す…という読書体験になりました。

スタバで読んでいたとき、あまりに泣いてしまい、店員さんに「大丈夫ですか!?」と声をかけられたのは、ちょっと恥ずかしかったです。


「患者の視点で在宅医療を語る本を作りたい」という願いから始まった

物語の中心にいるのは、訪問看護師として200人近くの患者の最期に立ち会ってきた男性。そんな彼が、膵臓がんの診断を受け、自分自身の死に向き合う立場になります。

彼の最後の願いは、「患者の視点から在宅医療を語る本をつくりたい」というものでした。最初は訪問看護のノウハウ本のようなものを想像しましたが、まったく違いました。

本書に描かれているのは、一人の人間が、死に直面しながらも生き抜こうとする姿そのもの
そこには「命の閉じ方」だけでなく、「どう生きるか」という問いが静かに、けれど確かに刻まれていました。

がんと向き合うすべての人に──

『エンド・オブ・ライフ』は、死を描きながらも「生」を深く考えさせてくれる一冊です。
がん患者さんに関わるすべての人に、ぜひ読んでほしいと思いました。

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MRとして、そして一人の人間として

私たちMRは、患者さんと直接会うことはほとんどありません。ときどき、がんサバイバーの方が講演に来てくださる機会がありますが、当然ながらその方々は“生き延びた側”です。

一方、本書には標準治療が効かなくなり、BSC(Best Supportive Care)に移行した患者さんたちのその後が描かれています。

そこには、「治療をしない選択」すら、その人にとっての“正解”である可能性があるという現実がありました。

私はそれまで、標準治療が「正解」だと信じて疑いませんでした。
でも、それが本当に“その人の人生にとっての正解”かは、わからない。
そう思うようになった自分がいます。


この本を読んでから、薬の話し方が少し変わった

読後、自分がMRとして薬をどう伝えるべきか、少しわからなくなりました。
でも、それはきっと悪いことではない。
本書によって得た“想像力”は、医療に携わる人間として、きっと必要な感覚なのだと思います。

病気を「治す」ことばかりを追い求めるのではなく、「その人がどう生きるか」に想像を巡らせられるMRでありたい。
この本は、そんな大切な視点を、私にプレゼントしてくれました。


最後に

この本で一番、私の胸に突き刺さったのは、たった一言――

「今を生きよ。」

派手な言葉ではないけれど、彼の生きざまを見た後では、これ以上の言葉はないと感じました。

自らの死を受け入れることができなかった彼が、それでも最後まで誠実に、貪欲に、「今」を生きようとする姿。その姿勢こそが、読む者に「生き方とは何か」を問いかけてきます。

MRとして、そして一人の人間として、私はこの本から大切な視点をもらいました。

どんなに正解がわからなくても、迷いながらでも、「今」を自分の足で歩んでいくこと。

そして、もっと好き勝手生きていいんだ。

本書はその勇気を、静かに、でも力強く与えてくれる一冊でした。

まとまりのない感想かもしれません。
でも、本当に胸を打つ本は、うまくまとめられなくて当然かもしれません。

それくらい、心に残る一冊でした。
読んで、本当に良かったと思います。

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『エンド・オブ・ライフ』は、死を描きながらも「生」を深く考えさせてくれる一冊です。
がん患者さんに関わるすべての人に、ぜひ読んでほしいと思いました。

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