【書評】管理職は“罰ゲーム”なのか?現役MRが『罰ゲーム化する管理職』を読んで考えたこと

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罰ゲーム化する管理職 表紙

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目次

はじめに:管理職になりたいですか?

今、チームリーダーとして働いている私にとって、次に見据えるキャリアは「管理職」です。


しかし最近、「管理職になりたくない若者が増えている」といった記事を目にする機会が増えました。

実際、私自身も身の回りの管理職たちが多忙で苦しそうな姿を見て、
「本当に管理職って幸せなのだろうか?」と疑問に思っていたのです。

そんなときに出会ったのがこの1冊。
『罰ゲーム化する管理職 ― バグだらけの職場の修正法』(小林祐児 著)

タイトルを見た瞬間に「これは今の時代に必要なテーマだ」と直感し、思わず手に取りました。


本記事では、同書を読みながら自分自身のキャリアと重ね、
「本当に管理職を目指すべきなのか?」という問いについて考えたことをまとめてみます。


書籍概要|5つの視点から管理職の“苦しさ”を解剖

本書は以下のような5章構成で、「罰ゲーム化」してしまった管理職の実態と、その改善策を探っていきます。

  • 第1章:理解編|「罰ゲーム化」とはどんなことか
  • 第2章:解析編|管理職の何がそんなに大変なのか
  • 第3章:構造編|なぜその構造が放置されるのか
  • 第4章:修正編|どうすればこの状態を変えられるか
  • 第5章:攻略編|それでも管理職をやっていくには?

第1章:「管理職の報酬」は本当に見合っているか?

印象的だったのは、「管理職は一般職より死亡率が高い。とくに自殺が多い」という一節。


数字としての重みもさることながら、それが現場感覚としてもリアルに感じられたからです。

たとえば私が働く製薬業界でも、オンコロジーMRや専門領域のMRは年々待遇が改善され、
管理職との給与差が縮まってきている実感があります。


さらに、管理職になると残業代がつかなくなるため、夜間の講演会対応が多い現場では不利にも感じられます。

また、特に印象に残ったのが「女性の管理職志望が極端に少ない」というデータ。


ライフステージの変化と管理職の負荷が重なることで、意欲を持ちづらい現実があるようです。
これは多くの企業で「女性管理職比率の向上」が叫ばれている今だからこそ、見落とせない問題だと感じました。


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第2章:「プレイングマネージャー化」が現場を苦しめる

この章では、管理職の負荷が年々上がっている理由を整理しています。
とくに以下のキーワードが印象的でした:

  • 人手不足
  • プレイングマネージャー化
  • 年上部下の増加
  • ハラスメント防止対応
  • 働き方改革による労働時間制限

これらが理由で管理職の負荷が上がり、

部下に思考の余裕を持たせる時間がなくなり、

結果としてマイクロマネジメントに陥ってしまう悪循環が生まれている。


まさに「管理職のデフレスパイラル」が起きているのだと強く実感しました。

興味深かったのは、人事部と現場管理職との“意識のズレ”。


現場では「人手不足・後任者不在」が最重要課題とされているのに、


人事部では8位・9位程度の認識にとどまっているとのこと。


このギャップが、現場の疲弊感につながっているのかもしれません。


第3章:「勝手に参加させられ、勝手に下される」管理職という歪さ

本章では、日本の管理職制度の構造的な歪みが、端的かつ強烈な一文で表現されます。

「日本の管理職は“勝手に参加させられ、勝手に下される雑用係”という、世界でも極めて奇妙な姿をしている」

この一文を読んだ瞬間、思わず苦笑いしてしまいましたが、同時に胸の奥がざわつく感覚もありました。
なぜなら、これが“誇張ではない”と感じられるほど、リアルだったからです。


オプトイン vs オプトアウト|「断れない昇進」が生む歪み

本書では、日本の管理職制度が“オプトアウト方式”(=自分の意思に関係なく任命される)であることが、


構造的な問題の源になっていると指摘します。

たとえば海外では、「管理職になりたい」という意思表示(オプトイン)が必要なケースが多く、


昇進は“キャリア選択のひとつ”として尊重されている。


それに対し、日本では「正社員なら誰でも管理職を目指すのが当然」という暗黙のルールがあり、


準備もないままに“気づけば管理職にされていた”という状況が当たり前のように起きています。

そういう意味では、海外と異なり正社員であれば全員管理職や幹部を目指せる点では日本はフェアで

良い点なのかもしれないが、

これではモチベーションが海外の管理職より低くても致し方ないのかなと思わされますね。


管理職経験は“キャリアの価値”になるのか?

さらに本書では、転職市場における管理職経験の評価にも警鐘を鳴らします。

特に日系企業では、管理職が“ジェネラリスト”として次々に部署異動させられる傾向が強く、


結果として「専門性が身につかない」「市場価値が曖昧になる」といった弊害が生じているのです。

この点は、オンコロジーMRとして専門性を積み重ねている私自身にも強く刺さる指摘でした。


今後、もし管理職に就いた場合、「オンコロジー×マネジメント」という経験が


どのように評価されるのか?


むしろ専門性が薄まってしまうのではないか?



第4章:筋トレのように、管理職を鍛えればよいのか?

「管理職に必要なのは“マネジメント筋”だ」


そんな安直な発想が、むしろ現場を混乱させている——本書はそう指摘します。

多くの企業では、次世代リーダーの育成を目的に研修投資をしていますが、


それが“管理職だけ”に偏りがちで、部下とのスキルギャップを生み出してしまう。


これは非常に腑に落ちました。

私自身も、「上司が突然キャラ変した」「謎の自己啓発的発言が増えた」と感じることがありますが、


それはこうした“研修の副作用”だったのかもしれません。

解決策として本書がいくつか挙げているが、

なるほどなと思わされた手段が、早期から後継者育成に取り組むこと


私自身もある日突然チームリーダーに抜擢された1人で、

それまでに何か研修や事前準備などは全くさせてもらえなかった。
(自主的に本を読んだり、ポジションについたことを想定して仕事するように意識したりはしていたが)

管理職になった方々もきっとそうなんだろうなと思っている。

後継者を育てると言う事は、エンパワーメントをして自分の分身をつくる、

つまり管理職としての負荷が減ることにつながるからだ。

なので、早め早めに後継者には管理職候補であることのメッセージを伝え育てていくことが重要ですね。


第5章:それでも、管理職を目指すべきか?

最終章では、管理職が自身を追い込み、


「自分すら許せなくなってしまう」精神状態に陥る危険性について描かれています。

年齢を重ねてキャリアの幅が狭まり、責任ばかりが増えていく中で、


柔軟性や自己肯定感を失っていく。


管理職という立場は、それだけ大きなプレッシャーを伴うものだと改めて感じました。

正直、この本を読み終えた直後は、


「本当に管理職を目指してよいのか?」という迷いが生まれました。

しかし——最後のページに、その答えがありました。

「立場が変われば、見える景色が変わる」
想像して、準備して、そして飛び込む勇気を持つ。
“罰ゲーム”かどうかは、自分で体験してから判断すればよい——

このページには実際に管理職になった方々の自己成長についても具体的に記載されていて、

人間としての成長を目の当たりにすることができます。

その経験や言葉たちに背中を押された気がします。


まとめ|この本は誰におすすめか?

本書は、管理職を目指すすべての人に一読してほしい1冊です。

部下から見える景色と、管理職から見える景色は

想像ですが、まったく違った景色なんだと思います。

本書を読めばより想像がよりリアルになり、上司に対する理解度と対応が全く違うものになるはずです。

そして、ぜひ今管理職として苦しんでいる人にもぜひ読んでいただきたい一冊でした。


そして、すでに管理職で「報われない」と感じている方には、


「あなたのせいじゃない」と語りかけてくれるような救いも、確かに存在します。

いかがでしたでしょうか。

まだまだ、慣れない書評ではありますが、本はよく読むほうなので、

これからも皆さんの役に立ちそうな本をぼちぼち書いていこうと思ってます。

では、また!

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